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ナカミチ CA-50          1986年  15万円    3.7kg

      CA-50 Ⅱ        1987年  20万円   5.1kg

 ◎序論
 ナカミチがカセットデッキだけではなく総合オーディオメーカーとして飛躍しようとしていた時期の製品。
 基本開発は中道悦郎氏。中道研究所(のちのナカミチリサーチ)として青森から世界へ飛び立ったナカミチ。

 1978年には、チューナー付きアンプ730発売。いわゆるレシーバーの需要はアメリカで高かったのだった。
 名機1000ZXLは1980年発売。

 センターサーチターンテーブルTX-1000 は1981年発売。
 
 1982年 ドラゴン と そのDDモーターの礎となったZX-9 発売。
 ZX-9は、ナカミチカセットデッキの最高峰と言える。

 しかし、ナカミチの絶頂の1982年11月中道悦郎氏がロスで死去。創業者の悦郎氏を失ってしまった。
 
 システム(パワーアンプ、コントロールアンプ(プリアンプ)、チューナー、ターンテーブル、そしてCDプレーヤー)フルラインアップをそろえるという悲願達成の時期に、創業者悦郎氏が亡くなってしまったのが、メーカーとしてのナカミチの実は終焉であった。

 以降の製品は、後継者の思想信条、経営手腕、技術的限界が、メーカーの存続を維持できなかったことで実証されてしまった。
 


 ◎コントロールアンプ CA-50

  ナカミチのシステム50/70のcatalogより。
 この時点では、CA-70は完成していなかった。

 
 CA-50   1986年発売
 

 カセットテープのヘッドアンプ=微小信号を増幅する技術と、小さなカセットテープに、周波数特性良く記録するイコライジング技術、さらにノイズリダクションの技術、最終的にそれら技術を製品に落とし込んで実現、生産するのがメーカー。
 
 ナカミチは、高性能のヘッドを自製、というよりヘッド製造から始まったメーカーだ。

 イコライジングカーブ。つまり音をいじって整えて、低域を小さく、高域を大きく録音することによって、高域特性を維持する。
 テープは磁性体で作られていて、そこに磁力で波形を記録する。
 フラットに録音すると低域のエネルギーでテープ磁性体が飽和してしまう。
 
 そこで、周波数の山、谷をいじって、テープに記録できるようにしたのがカセットテープのEQカーブ。
 この辺のテープの規格、録音再生の規格をオープンにしたフィリップスはすごいメーカーだったのだ。
 結果的に、カセットテープは全世界的にオーディオを広めた録音再生規格となったのだ。
 

 そのカセット規格より前に、記録媒体としてビニール盤に信号波形を記録する規格が存在した。
 ビニール盤レコードである。
 記録するイコライジングカーブはRIAAカーブである。
 低域を小さく、高域を大きく(強く)盤面に記録して、それを拾う針に信号を伝える。
 それを電気的に復調する回路が、フォノイコライザーだ。

 カセットデッキは、デッキ内にそのアンプを備えている。つまりヘッドから取得する磁気信号はかなり微小なのでそれを増幅、復調する回路はデッキ内に設置しないとノイズの塊になってしまう。

 カートリッジからの信号をRIAAカーブに基づいて復調するのが、ヘッドアンプ。
 一番最初のアンプ。
 その後にエコライザーを通す。
 そうすると、レコードに記録される前の信号に戻るのである。

 ここで問題は、レコード盤面に記録された山谷(凸凹)を広くカートリッジの構造が一つではないことだ。
 出力電圧が比較的大きな、だがダイナミックさは良いけれど細かいニュアンス再生が難しいMM型。moving magnetto
 音がMM以上に繊細でよりハイファイに再生できるが、出力電圧の低いMC型。 moving coil
 
 それぞれの構造上の違いは各自勉強してください。

 プリアンプは、フォノEQ動作のほかに、微小なカートリッジ電圧を増幅するアンプリファイアーの機能が求められる。
 その微小信号の増幅技術は、カセットデッキのヘッドアンプで培った技術が応用できた。

 基本思想は、きわめて原音忠実。まじめな考え方。それは回路設計に表れていて、中身写真を見るとそれが納得できる。

 余談だが、フォノイコライザー、ヘッドアンプは、基本デバイスに沿って回路を設計すると美しい姿になる。 (^^)
 後のデジタルのDAC周辺の回路の姿にもそれが言える。

 
 CA-50  カタログより

 翌年1987年 CA-70 というか、システム70シリーズのデザインを適用したCA-50 のセカンドバージョン化したCA-50 Ⅱを発売。

 コントロールアンプと名前を付けてしまった結果、トーンコントロールを追加する改造を行った。
 つまりフォノイコライザー=プリアンプ、というより、コントールアンプ=トーンコントロールという思想になってしまったのだ。これは仕方ないと言えば仕方がない。
 PA-70 で、日本ではメーターがないと売れないというデザインの縛りを打ち破ったナカミチが、トーンコントロールを廃して、ストレートウイズゲインを実践してくれればよかった。コントロールアンプに、トーンコントロールをつけるというこれも日本のしがらみには抗えなかったと思われる。


 
 CA-50 Ⅱ
 
 外装にアルミパネルを多用。底板は、50と同じ鉄板だが銅メッキが追加された。
 
 70シリーズのアルミ外装がカセットデッキに活かされることはなかった。
 PA-70CEは、こちこちの構造にしたら、音がかちかちになってしまった。

 その後、1000DAT、1000DAC(1000P)にふんだんなアルミ外装デザインにしたのがナカミチの最後になった。(空気遮断にアルミケースをつかったドラゴンCDがあったが、それは車載用の考えが発端)
 
 
 上のCA-50 と下のCA-50 Ⅱの内部を比較すると面白い。
 
 トーンコントロールPCBはさておき。トランスと電源部のコンデンサーの違いが大きい。
 CA-50 は小さい電解コンを8本使っているが、Ⅱは、オーディオ用のすこし容量の大きな電解コン2つ。
 つまり電源部のインピーダンスが下がっている、という事。
 
 トランスは、Ⅱでトロイダル化。トロイダルとEIコアの音質差はあるのですが、ナカミチの設計開発陣が決めたことですから何らかのメリットがあったのでしょう。ここでは、その構造の差による議論はしません。

 ◎音質

  CA-70 は、フォノEQアンプ部を含めすべての基板がガラスエポキシ。
  基本のヘッドアンプ、フォノEQの設計思想はCA-50 も同じ。
  ディスクリートにこだわるのも同じ。
  オペアンプではなく、豪勢なディスクリート回路。

 ディスクリートにすると、部品のばらつきが音質のばらつきになりやすい。
 ICだと、ばらつきは無くなるけど、音はそのデバイスの音になってしまう。
 このころナカミチは、ディスクリート=金がかかっても原音忠実でオケ、な会社だった。

 CA-50 (Ⅱ)の基板は、写真の通りオーソドックスなフェノール基板。鉄板の底板に、樹脂スタッドで浮かしてある。
 レッグ(脚)は、1000ZXL、ZX-9などと同じ、小さなプラスティック製+フェルト。
 長岡鉄男氏の時代から、ダイナミックテストなどで、この足の評価がされてきた。本当のところはよくわからないが、長岡氏は、ナカミチの音決めは、この脚でやっているのでそれで良い、と評価していたので、それでよいのだ、と思われる。
 
 鉄シャーシも同じ。鉄シャーシはアルミのがちがちにせず、カセットデッキよりは薄い鉄板。これがアルミ板ではだめなのだ。
 だからオーディオは面白いし、難しい。
 フェノール基板、鉄シャーシ(底板)で鳴らすところを鳴らし、響きを作っている。そんな面白いことを昔のナカミチ(いや、すべてのオーディオメーカー)はやっていたのだな~。

 その後、色々なメーカーからアルミでがちがちに固めたフォノEQ、コントロールアンプ、昇圧トランスなどが発売されたが、各社各様のアプローチでの製品化だった。

 CA-70のかっちりした音に比べ、CA-50 はより楽に、楽しく演奏するプリアンプと思う。
 CA-70のガラエポ、ボリュームシステム、回路、部品の魅力はあるけど、CA50でも良いんじゃない?という思いは30年ずっと続いている。

 
 CA-50の取説より

 
 総合カタログ CA-50の諸元

 どちらも同じ数値。当たり前だ。


 ◎最後に

 我が家のCA-50Ⅱは、改造品。
 天板アルミ板は、ブチルゴムテープを挟んで2枚重ね。
 
 以前は、メイン基板裏にブチルテープを貼っていた。
 共振周波数が下がるので、一見(一聴)低域が豊かになるので表現が低域優先になる。
 しかし、ブチルは音を殺す、と、ナカミチ福島の先輩ヘックスさんの話もあり、何年も前にはがした。
 
 実は、その昔ブチルをいろいろなところに張り付け防振にしていた。
 プリメインアンプのヒートシンクフィンの鳴き止め。
 ターンテーブルの裏に貼り付け。
 カセットデッキのヘッドからの線材の鳴き止め。
 などなど。

 その後、音を殺すのが明らかになり、取れるところはほぼ全部剥がしてしまった。
 
 CA50Ⅱは、ブチル剥がしたのち低域のブワンブワンしたところがなくなり、軽く楽しく鳴るようになった。
 どのコンポも同じだが、エージングには時間がかかる。このCA50は少なくとも3年以上。ブチルを剥がして1年以上、音が出るまでにかかった。

 その間、カートリッジは変わり(グレードアップ進化)。
 ターンテーブルヤマハGT2000XのTTをステンレス重量級ものに変更。
 などなど変化があるとそのたびに再生音にその変化が良い方に加わって聴こえる。これは結構すごいことだと思う。

 世は、ハイレゾ、ファイル再生の潮流渦巻いているが、ビニール盤もまだまだ捨てたもんじゃないと思えるのだ。
 
 世の中には、云千万のターンテーブルとかハイエンド製品も出ている。
 最近は中級クラスのTTの他、EQ付き、ブルートゥース、line出力のローコストのプレーヤーもある。

 まずは聴きたいソフト、アーティストがいるのが大前提。
 私は、中学生の時に初めて買ったLPを今だに持っている。
 その時代、その時代で聴くその音は、システムによって変化してくる、そういう楽しみもあるある意味ぜいたくなものなのだろう。
 最近プレスのレコードも購入するが、システムが高度化してくると位相特性などが向上。セパレーションもよくなり、CDと同じような音像展開をするようにはなる。
 しかし、アナログのレコードは、落ち着く。
 なぜか。
 永遠の問題なのだろうな。きっと。

 CDが出たときは、デジタル信号なのだから音は良い。と言われたが、機種ごとのDACの違いで音が変わる。
 CD-Rにしたときも、コピーでデジタルは劣化しない、と言われたが、実はパソコンでCD-Rを焼くと、確実に音は劣化した。
 
 これと同じことが、ハイレゾ、ファイル再生でも実は起こっている。
 
 ハイレゾファイル再生に舵を切った友人IK氏のシステムは、実は、DACにアナログ以上の金をかけているのだ。

 FLACだろうがWAVだろうが、DACを通る。しかし、その前のストレージ。つまり記録媒体が問題。HDD、SSDで音ががらがら変わり、接続のLAN、USBケーブルで音ががらがら変わる。また、各コンポの電源ケーブルでも音ががらがら変わる。
 SSDでも、振動は大敵。マグネットフローティングの台に設置したら音が大きく良くなった、と彼は言っていた。

 アナログでも、ハイレゾファイル再生でも実は金がかかるのは同じ。
 デジタルだから音が良い、と言うわけではないのは実証済み。
 ハイレゾは良い、と言われても、マルチDACに150万円。オーディオ用SSDに100万円~30万円。マグネットフローティング台に30万円~13万円。LANケーブル10万円。ハイスペックUSBケーブル数万円。各電源ケーブル10万円超。
 PC20-30万円。電源ケーブル30万円。
 とても、気安く始められるものではない。

 今回、ビートルズの新譜がでて、友人Tからハイレゾファイルを譲ってもらった。
 ノートPCのヘッドフォン再生で、かなり良い音で聴く事が出来た。
 USBメモリーに入れてあるので、LX800につないでメインシステムで聴くことができるはず。またはAVアンプで。
 
 できる部分から始めたいと思う。

 アナログの良いところは楽しめる間は、アナログで。
 ハイレゾファイル再生も、できる範囲で無理せず。
 どちらも、かなりハイレベルでの再生が見込める我システムなのであった。