地球最后の日    20200303


 DVD ジャケット

地球最后の日  1951年

DVDは、2019年3月29日発売  完全版 有限会社フォワード 

 従来のLD版より、映像、音質のグレードが上がっています。
 LDをBDレコーダーに移してDVD化したものは、画質が悪く記録用途以外には視聴するのに適しません。
 
 このDVDは、4:3カラー、日本語字幕付き。
 丁寧にマスタリングされて、とても1951年の映画作品とは思えない出来です。
 
 妙なトリミングもなく、作品を鑑賞できます。

 作品が公開された1951年の前年から見てみましょプ
 前年1950年は朝鮮戦争が始まった年。
 映画では  イブの総て    シンデレラ
 黒澤明の羅生門 が公開された。
 1950年2月に中ソ友好同盟相互援助条約を結んだ上に、中国がチベット侵攻やら、朝鮮戦争に介入し始めた年。

 地球最後の日を作る前に、ジョージパルが「月世界征服」を発表したのも1950年。

 1945年5月にドイツが、8月に日本が降伏して第2次世界大戦が終わってたった5年後。

 ドイツの最終兵器V2を生み出したフォンブラウンが、アメリカに投降、V2資材とスタッフとともにアメリカに亡命。
 1950年からアメリカアラバマ州ハンツヴィルに移住し、レッドストーンロケットの製作に取り掛かった。
 宇宙開発競争は、緒に就いたばかりだった。

 このころのSF映画の宇宙ロケットは、V2に影響され、流線形のものが多く、この地球最後の日のロケットも流線形のものだった。
 ドイツペーネミュンデ記念公園に展示されているV2

 完全版DVDの宇宙船

 ジョージパル(1908-1980)は、ハンガリー生まれ 1940年にアメリカに移住。

 1950年 月世界征服      Moon destruction
 1951年 地球最後の日    When worlds collde
 1953年 宇宙戦争       監督 バイロン・バスキン
 1955年 宇宙征服       監督 バイロン・バスキン  Conquest of space
 1960年 タイムマシン     製作・監督・モーロックのデザイン  The time machine
 1961年 謎の大陸 アトランティス     Atlantis the lost continent

 などSF映画を続々製作していきました。

 1951年の地球最後の日は、私の生まれる9年前の作品。
 私が本作を最初に見たのは、1960年代半ばに、福島テレビの映画の時間、おそらく水曜午後3時ころからのTV放送が最初だったと思います。
 その後何度か洋画劇場などで放送されたと思います。

 前記のように、LDにはなっていましたが、解像度、アスペクト比、などこなれ方がよろしくなく、DVDやハイビジョンの現代では視聴に堪えないものになっていました。

 この完全版は、2019年3月に発売されたもので、有限会社フォワードがTV放送版の音声をつけて、おそらくリマスターした盤です。

 ランコーポレーションで、2009年7月15日発売の完全版というタイトルがついていないものが発売されていて、その版より、黒の沈み込み、精細感などが改善されているようです。(ランコーポレーションは、トリフィドの日を出しているメーカーです。このトリフィドの日のDVDマスタリングはすこしひどいものです。別項にてお話します。)



                              世情と映画、SF作品の系譜

 他の映画と日本映画                               1950-1953年 朝鮮戦争

 1951年 地球の静止する日  米    
      砂漠の鬼将軍     米
      遊星よりの物体X   米
 1953年 ピーターパン     ディズニー
      戦艦大和       新東宝
 1954年 ゴジラ         東宝
      潜水艦ロ号いまだ浮上せず    新東宝
 1955年 宇宙水爆戦
 1956年 ラドン         東宝
      十戒          米
      禁断の惑星       フレッドMウイルコックス
      ボディ・スナッチャー  
      人間魚雷回天     新東宝
      金星人地球を征服   ロジャーコーマン  金星ガニ登場

 1957年 地球防衛軍
      眼下の敵        米
      戦場にかける橋    米英日
      明治天皇と日露戦争 新東宝
 1958年 美女と透明人間    東宝
      大怪獣バラン

 1959年 宇宙大戦争                               1959年からマーキュリー計画  キューバカストロ革命
      ベンハー
      四谷怪談
      地底探検        米 カラー ヘンリービレン
      渚にて         スタンリークレイマー
                                             1965-1966 ジェミニ計画    
                                             1961-1972 アポロ計画
                                             ソ 1961   ボストーク  ガガーリン 
                                             1961年  ベルリン危機  ケネディ大統領の時ベルリンキューバベトナムの3大外交問題が顕在化した。
                                             1961年 ベトナムへ米軍が介入 
                                             1962年  キューバ危機
 1961年 モスラ
      世界大戦争
 1962年 キングコング対ゴジラ
      妖星ゴラス
      史上最大の作戦
      007ドクターノー
      アラビアのロレンス
      シンドバッドの冒険
 1963年 マタンゴ
      海底軍艦
 1964年 モスラ対ゴジラ 
      宇宙大怪獣ドゴラ
      三大怪獣地球最大の決戦
      英国ITC  サンダーバード TV版 1964年~1966年
      メリーポピンズ
      忍者部隊月光 TV
 1965年 フランケンシュタイン対地底怪獣                    1965年ベトナム戦争 北爆開始
      怪獣大戦争                                              韓国軍も万の単位で参加し始める。軍需特需。
      大怪獣ガメラ      大映
      ガリバーと宇宙旅行 アニメ
      宇宙少年ソラン  TV
      スーパージェッター TV
      007 ゴールドフィンガー
      マイフェアレディ
      サウンドオブミュージック
      わんわん物語             ディズニー
 1966年 フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
      ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘
      ガメラ対バルゴン
      大魔神   3部作
      黄金バット 1966年12月21日公開  東映 白黒 モノラル
          監督 佐藤 肇 脚本 高久 進  
          ソニー千葉真一
      怪竜大決戦 1966年12月 東映 カラー モノラル
          監督 山口 鉄也 脚本 伊上 勝 伊上は、宣弘社 遊星王子(s33-34)怪傑ハリマオ、隠密剣士、悪魔君などを手掛けた。
          自来也 松方弘樹    綱手 小川知子   大蛇丸 大友 柳太朗
      ミクロの決死圏 英
      恐竜100万年 英 日本公開1967年 特撮ハリーハウゼン
      砲艦サンパブロ 米

      ウルトラQ TV 1966年1月2日から7月3日まで TBS 毎週日曜 1900-1930 

      ウルトラマン TV 1966年7月17日から1967年4月まで 全39回

      マグマ大使  TVは1966年7月4日から1967年9月25日 全64話 52回+再放送12回 (漫画 1965年5月から1967年8月)

 1967年 キングコングの逆襲
      怪獣島の決戦   ゴジラの息子
      ガメラ対ギャオス     東映
      大巨獣ガッパ       松竹
      宇宙大怪獣 ギララ   日活
      
      バーバレラ             ジェーンフォンダ
      サンダーバード アー ゴー    ゼロX号
      007  007は二度死ぬ   浜美枝
      特攻大作戦

      キャプテンウルトラ TV
      仮面の忍者赤影 TV 1967年4月5日~1968年3月27日全52話 水曜1900-1930
      ウルトラセブン  TV  1967年10月1日~1968年9月8日 TBS 日曜1900-1930  全49話
      怪獣王子     TV  1967年10月2日~1968年3月25日 フジ 月曜1900-1930 全26話

                                                1968年ジョンソン大統領北爆停止
                                                1969年ニクソン大統領就任
                                                    ブレジネフソ連書記長は、中国との関係悪化から、米国と緊張緩和デタントの道を模索するようになった。

 1968年 怪獣総進撃
      ガメラ対バイラス
      吸血鬼ゴケミドロ
                    併映 黒蜥蜴      美輪明宏
      昆虫大戦争
                    併映 吸血髑髏船
      ガンマ―第三号宇宙大作戦

      2001年宇宙の旅
      猿の惑星
      サンダーバード6号
 
      怪奇大作戦 TV 1968年9月15日~1969年3月9日 日曜1900-1930  全26話

                                                 1969年 アポロ11号月着陸

 1969年 ゴジラ・ガバラ・ミニラ オール怪獣大進撃
      緯度ゼロ大作戦
      ガメラ対ギロン

      女王陛下の007
      荒鷲の要塞
      空軍大戦略  
      恐竜グワンジ

      日本海大海戦 監督 丸山誠治    坂野義光 実景撮影などで円谷組の補佐を務めた。
      飛び出す冒険映画 赤影        夏休み 東映まんが祭り 金目教篇 赤、青のセロハン立体メガネで飛び出す赤影
      空飛ぶゆうれい船             東映アニメ
      長靴をはいた猫              東映アニメ   

      サインはV     TV
      空中都市008   NHK 1969年4月から1年。月から金、午後6時5分から6時20分。
                 原作小松左京の人形劇。和製サンダーバードの呼び声も掛かるが、映像資料がスペシャル番組を除き存在しないらしい。
                 結構まじめなSF設定で、おやぢが覚えているのはホバーカーの開発競争のお話。負けたホバーカーが水に沈んでいく様が妙に切なかった。

     
 以上のジャケ写など、怪獣特撮のページに詳細があります。ご参照お願いします。

 他の作品、世情を1950年―1960年代を一気に見てきました。
 いかに、ジョージパルの地球最後の日がSF的なまなざしを持っていたか、わかります。

 監督 ルドルフ・ホテ
 脚本 シドン・ボーエム
 原作 エドウイン・バーマー フィリップ・ウイリス  1932-33年ブルーブック紙に連載。1933年単行本化。
                               1998年創元SF文庫
 製作 ジョージ・パル
 出演 ディマド・ランベール  リチャード・テデア  日本語  広川太一郎
     ジョイス・ヘンドロン  バーバラ・ラッシュ        鈴木弘子
     ドニー・ドレイク    ピーター・ハンセン        納屋六郎
     ユール・ヘンドロン  ラリー・キーティング
     シドニー・スタントン  ジョン・ホイト

 放浪惑星 べラスとザイラー
 小説では、ブロンソンアルファとブロンソンベータ
 
 パラマウント
 1951年8月 米
 1952年4月 日  公開

 朝鮮戦争真っただ中。

 朝鮮という限定地域の戦争が核戦争へ発展する可能性も当然あったわけですが、当初は、中国もソ連も表立っては介入してきませんでした。
 これが、表立ったったとき、放浪惑星にぶつかる前に地球が消滅する現実的な恐怖があったはずです。

 これは、1960年前後の世相、映画にも表れています。(後述)

 さて、この映画は、人類滅亡というときに、人々がいかに行動するかを描いたおそらく初めての映画だと思われます。
 小説版も、他の天体が地球に衝突して消滅、人類も滅亡する、ということを表した最初のものらしいです。

 ジョージパルは、脱出用ノアの箱舟宇宙船を建造する人々、周囲の人々を淡々と、性善説に基づいて描きます。
 脱出ロケットがある場合、それを建設する地域を特定して大量の難民が押し寄せるはず。これはのちの2012という映画に描かれています。(これもかなり脳天気お花畑的映画ではありますが)

 400名の作業者で40名ほどの人間を乗せて脱出する宇宙船を建造。

 最後の最後に乗れなかったメンバーが反乱を起こしますが、我身保身の権化出資者スタントンを道連れに、良心の塊のヘンドロン博士が、さっさと入り口のコンベアデッキを閉じてしまいます。それで出発シークエンスが開始されるプログラムを仕込んでいたのでしょう。

 ローンチ(発射)は問題なく実行。

 あのカタパルト構造だと、下降から上昇で角度が変わる地点で構造破壊が起きるはず。そんなことは関係なく飛び立ちます。

 ザイラに無事着陸すると、空気確認することもなしに、エアロックを開け、美味い空気だと。

 背景が、雪と氷の平原だったのが、緑が咲く、水の湖もある地形に変身。
 おまけに左端に、人工構造物のようなものが一瞬見えます。

 良心的に考えれば、べラスは恒星で、光とエネルギーがあり、そこを回る惑星ザイラは、空気も有機物もおそらく生命もはぐくんだ、と。

 今後、異星生命体とのファーストコンタクトの話も展開可能な面白いSF映画でした。

 このように、何十億がたかだか40人くらいの人間で文明が生き延びるというお花畑の映画なのですが。それが末期的な世相であっても、いつの世も絶対希望を失うな!という強烈なメッセージになっている佳作映画でした!